■モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、イタリア初の女性医師『マリア・モンテッソーリ(1870~1952)』によって考案された教育法です。
イタリアのローマで医師として精神病院で働いていたモンテッソーリは、知的障害のある子どもへ「感覚教育法」を施し知的水準を上げるという効果を確認しました。
その後、1907年に設立した貧困層の健常児を対象とした保育施設「子どもの家」において、その教育法を完成させました。
既に90年以上の歴史をもち、世界各地で盛んに実践され、その効果が実証されています。
■モンテッソーリ教育の目的
モンテッソーリ教育の目的は、それぞれ発達段階にある子供を援助し、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間に育てる」ことです。
この目的を達成するため、マリア・モンテッソーリは、子供を観察し、そこから得た事実に基づいて教育法を構成し、独特の体系を持つ教具を開発しました。
その教育法の正しさは、現代の大脳生理学、心理学、教育学などの成果によって証明されています。
■モンテッソーリ教育を受けた著名人
・Amazon.comの創立者ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)
・Googleの共同創立者セルゲイ・ブリン(Sergey Brin)とラリー・ペイジ(Larry Page)
・wikipedia創設者ジミー・ウェールズ(Jimmy Wales)
・ワシントン・ポスト誌の経営者および、ジャーナリストだったキャサリン・グラハム(Katharine Graham)
・アンネ・フランク
・最近では日本の将棋で有名になった藤井四段もモンテッソーリ幼稚園に通っていたと言われています。
■モンテッソーリ教育の特徴
モンテッソーリ教育では、子ども達が安心して自由にやりたい事を選択し活動します。
マリア・モンテッソーリは、子どもを観察するうちに、月齢や年齢ごとに子ども達の興味の対象が次々と移り変わる点に着目しました。
脳生理学に基づき、さまざまな能力の獲得には、それぞれ最適な時期があると結論付け、これを「敏感期」と名付けました。
敏感期には、運動の敏感期、感覚の敏感期、秩序の敏感期、話し言葉の敏感期、文字に対する敏感期、数に対する敏感期、文化の敏感期などがあります。
この子ども達の「自由」の保証と、「敏感期」を育むことが、モンテッソーリ教育の大きな特徴となっています。
子どもは、集団で同じことをするのではなく、自分で自分の活動を選び、自分のリズムで納得いくまで繰り返し活動するのです。
モンテッソーリ教育では、子ども達が自発的な活動に好きなだけ取り組むことが尊重されるため、周囲の大人はこの知的好奇心が自発的に現れるように、発達段階に適した環境を整えることが大切です。
そのためには、子どもが自分で自由に教具を選べる環境を作り、やってみたいと思わせる魅力的な教具を揃えます。
大人は子どもが自ら成長しようとするのを手伝う「ひとりでできた」をサポートしていくことが大切です。
■発達の4段階
モンテッソーリは子どもの発達を24歳までの期間で考え、0~24歳を4段階に分けました。
一生の中で顕著な発達は最初の24年間で、その後は内面的に成熟します。
当教室では、0歳から3歳までの第一段階のお子様向けのママ&ベビークラスを開催しています。
この時期の子どもは、大きく成長・変容する時期です。また、敏感期が集中する時期でもあります。
0~3歳:無意識的吸収の時期
良い事も悪い事関係なく、すべてスポンジのように無意識に吸収します。
物的環境、人的環境に大きな影響を受ける時期です。
だからこそ、大人が子どもにとって良い環境を整えてあげることが大切です。
■モンテッソーリ教育の5分野
マリア・モンテッソーリによって考え出された教具は,子ども達のそれぞれの敏感期を元に、5つの分野(日常生活の練習、感覚教育、言語教育、算数教育、文化教育)に体系化されています。
①日常生活の練習
大人にとっては当たり前の日常生活ですが、子どもにとっては当たり前ではありません。
日常生活の練習とは、生活していく上で必要な動きすべてのことを指します。
立つ、座る、歩く、つまむ、折る、切る、縫うなどの運動、あいさつ、マナー、身だしなみなども教育内容として組み込まれています。
日常生活の様々な練習を通して、自分の生活を依存から自立へと成長させ、さらには精神的にも自立する心を育てます。
【この時の教具の特徴】
・子どもが扱いやすいような子ども用サイズのもの
・子どもが思わず手を出したくなるほど色彩や形が魅力的なもの
・清潔であるもの
(簡単に洗えて常に清潔に保つことができ、子供自身が汚れに気付くもの)
・落とせば割れてしまう陶器やガラス製のものなど、本物であることも重要。
(本物の教具を使うことによって、本物の持つ美しさを感じられたり、壊さないように慎重に扱うことに慣れる練習をする )
②感覚教育
モンテッソーリは、子どもは3歳から6歳の間に、視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚の五感が著しく発達する特別な時期があることに気付きました。
0~3歳の時期は無意識に周りのものすべてを吸収し、3~6歳の時期にこれまで吸収してきた事柄を自分自身の中で整理し、分類し、系統立てていきます。
バーチャルな世界だけではなく、実際に見て触れて五感で感じていくことが大切です。
感覚の発達は知的活動の基礎となるため、モンテッソーリ教育の中でも特に重要視されています。
③ 言語教育
子どもは、胎児の頃からお腹の中でお母さんの声を感じています。
まだ言葉を話さない子どもにも、幼児語ではなく正しい言葉をつかってたくさん話しかけ、語彙を豊かにすることが大切です。
モンテッソーリ教育では「読む」よりも「書く」活動を先に行います。
1文字ずつひろい読みをする段階を「読む」とするのではなく、読んで意味が分かりイメージできる段階を「読む」と考えています。
④数
具体物を使用して1~10、0(ゼロ)を紹介し、十進法、連続数、加減乗除の概念形成を行います。
モンテッソーリ教育の数教育は、暗算や計算ができるようになることを目標としているのではなく、数活動を通しての人格形成を大切にしています。
⑤文化
子どもは自分の身の周りの動植物、天気、時間など様々な分野に知的好奇心をもつようになります。
生命、地球、生物、音楽、美術など宇宙にあるすべてのものが文化教育の分野です。
大人は子どもの疑問や好奇心に対し、分かりやすく伝えていくことが大切です。
■関わる大人も「環境」のひとつ
モンテッソーリ教育では「子どもは、生まれながらに自らを成長・発達させる力(自己教育力)を持っており、大人は、その要求をくみ取り、自由を保障し、子供たちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」という考え方を基本にしています。
子どもはできないのではなくどうやったらいいか知らないだけなのです。
子どもが100%自己教育力を発揮できるように 、ふさわしい環境設定 (人的環境、物的環境)、適切な教具を準備・配置し、子どもに使い方を提示し、子どもが満足するまで繰り返し出来るように配慮してあげることが大人の役割です。
人的環境設定
・子どもをよく観察し、何に興味を持っているのか、何に困っているかを知り適切なサポートをする
・子どもが集中して活動をしている時に、それを妨げない心遣いや、子供の自発性を「待つ」ことも大切。
・やり方をゆっくりと見せる=提示
・子どもができること、やりたい事を「大人がやったほうが早いから、あなたにはまだ難しいでしょ」と奪わない。
・子どもの要求に耳を傾け、よく聞いてあげる。
・子どものしていることを尊重する。大人の一方的な都合で、子供の仕事を中断したり、妨げたりしないように心掛ける。
・子どもの間違いを直接的に訂正しない。
・無駄に大げさに褒める必要はない。「できたね」と優しく声をかけたり事実を認める。
物的環境設定
・子どもが取扱いやすいサイズの教具を用意する
・子どもが自分で活動を選べるようにする(棚に見やすく、取りやすく置く。あらかじめ1つのお仕事に必要なものを、トレイなどにまとめておく。)
・色や形が美しく、清潔で、本物である教具を用意する(慎重に扱う態度が身につき、美しさに惹かれて子供がやってみたい!という気持ちになる)
・子どもの敏感期、発達段階に合った教具や活動を用意する
提示とは
提示とは、活動や用具、教具の使い方を子どもにして見せること。
モンテッソーリ教育では、教え込むということはしない。
子どもができなかったり、間違ったりしても訂正せず、「みててね」と言って提示を何度も繰り返し見せる。
一つ一つの動きを分析し、ゆっくりと動きを見せます。
その時、言葉で説明しながらではなく、「みててね」と言って動きだけをしてみせる。